代表メッセージ

未来の「顔身体デザイン」に向けて

山口 真美(中央大学・教授)

本領域は2017年に採択された新学術領域研究『顔・身体学』を発展させ、前領域で確立した「顔身体学」の概念を「実践」「実証」「設計」に基づき、拡張・逸脱・深化・昇華させることにより、未来の顔と身体のデザインをめざします。

本領域では、オンライン化が進んだ現代社会における顔と身体が持つ実存的な苦しみに焦点をあてます。現代社会の中で、身体から切り離され自身のアイデンティティの象徴として扱われる顔は、顔固有の主観的な問題を持ち、一方で、顔から引き離された身体は、身体に物理的に課される不自由さがあります。インタラクションをベースに新しい顔身体を考えることにより、このような問題を抱える顔身体の接合作業を行います。
さらに、アートやパフォーマンスなどの実践を通じた、顔や身体の持つ問題の昇華を考えます。その過程の実証的解明と設計と理論化を通じ、未来の顔身体とその社会のデザインを提案します。社会・文化を原因とする差別や痛み等負の特性を軽減する、未来の顔身体のデザインを目指します。

本領域のポイントに、「実践的な実証」「未来社会に合わせた倫理の実践」があります。
また、領域に関わる多様な方法論のメンバーが「実践」を共有することによって目標を一つにし、人文社会科学の新しい研究分野の構築をめざしていきます。

本領域の推進には、計画班・総括班のメンバーに加え、目標の達成に向けて共に研究を推進していく公募班、様々な場面で助言をいただく評価委員と班友との間のディスカッションがなによりも貴重です。異なる土俵で切磋琢磨してきた強者たちが出会い、ぶつかり、互いの違いを把握しながら乗り越え、新しい学問領域を作り上げる場を提供したいと思います。
それには文部科学省や日本学術振興会等の関係各位のご協力が欠かせません。
本領域の研究活動と運営に、一層のご支援をお願い申し上げます。